Page 18 - 東京都公立大学法人 環境報告書2024
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東京都事業 TOPICS DXで支える東京の生物多様性情報基盤 ~東京都との協定に基づく取組~ 東京都は、1 400 万人が暮らす日本最大の都市でありながら、奥多摩の山地から丘陵地の里山、市街地の緑地や水辺、島しょ部 の固有の生態系など、多様で豊かな自然を有しており、東京に生息・生育する野生生物の分布状況をとらえることは、生物多様 性を保全していくうえで重要になります。全世界的にネイチャーポジティブへの機運が高まる中、東京都では、生物多様性の基 盤情報の整備を進めるため、2023 年度から「DX を活用した都民とつくる野生生物目録策定事業」を開始しました。 都内全域における野生生物の分布状況を調べるには、多大な時間と労力が必要であり、専門家だけでは不可能です。そこで、 この事業が掲げる「東京いきもの調査団」の取組は、東京都の生物多様性を把握するために、東京都・専門家・都民が一体と なり、リアルタイム性と網羅性を兼ね備えたデジタル版野生生物目録「東京いきもの台帳」を作成するプロジェクトとなって います。生物名前判定 AI を搭載したスマートフォンアプリ「いきものコレクションアプリ Biome」と「生物調査専用アプリ BiomeSurvey」を中心に、市民科学の力を活かして東京の野生生物の情報を収集・蓄積していきます。 この事業に専門家として参加している、東京都立大学理学研究科生命科学専攻の加藤英寿助教が行う取組について紹介します。 東京都立大学の役割 東京都立大学は、2024年度から東京都と協定を結び、植 物目録策定のための事務局(東京いきもの台帳・植物目録作 成事務局)を東京都立大学の一施設である牧野標本館に設置 しました。事務局としての役割は、都内の植物多様性に関す る情報収集と現地調査、都民の方々に向けた調査活動の普及 啓発・支援のほか、情報収集のためのアプリ開発、個人蔵ま たは他機関所蔵の植物標本や文献資料の調査・受入・デジタ ル化等を実施しており、業務は多岐にわたっています。 特に重視しているのは、都内の自然に詳しい植物愛好家 やアマチュア研究者のような「市民科学者」の方々と連携 した調査活動で、これを「専門調査団」として位置づけ、 その活動を事務局が支援しています。例えば、都内の国立 公園や都立公園などで植物の調査や採集を行うときに、必 要な許可申請や土地所有者との交渉は事務局が行います。 また、採取することが難しい場所においては、それに代わ る情報収集の方法として「BiomeSurvey」を使い、位置 情報付きの写真データを撮影・投稿してもらい事務局にお いて情報を共有します。さらに、より多くの都民の方々に も「市民調査団」として、楽しく生きもの調査に参加でき るよう、スマホアプリ「Biome」のクエストなどを通して 情報収集を進めています。 東京いきもの台帳作成の流れ 17 


































































































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