Page 33 - 東京都公立大学法人 環境報告書2024
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東京都立産業技術大学院大学 学長 橋本 洋志 環境問題について話をしたいと思います。 人と物が活動すると、必ずエネルギー(食料も含む)を消費します。活動は経済を回し、人々の生活を豊かにします。また、 世界の中で、戦争や自然災害からの復興において日常生活を取り戻すようにと活動することが、膨大なセメントと鉄鋼を消費 するでしょう。 全 CO2排出量の 25%を占める農業と、両業種合計で 14%を占めるセメント製造業および鉄鋼業の活動(※)は環境問題と 相反することが予想されています。 次に、DX 社会推進にはレアメタル/レアアースの確保が重要ですが、その採掘と製錬には汚染物質と放射性廃棄物を大量 発生するため、厳格な管理が行われないと、深刻な環境汚染を引き起こす危険性があります。 環境問題を解決するとは、生活の豊かさ、復興や持続可能社会、DX 社会、個々人の多様な価値観など、それぞれに絡み合っ たトレードオフを考慮しなければなりません。これらを時代の流れに沿ってトータル的にマネジメントできる人材育成が非常 に大事です。この難しさは、現在言われている VUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)に通じるものです。 そして、VUCA に対応できる人材は、更に高次の持続的社会という世界的目標である SDGs にも対応できるとされています。 すなわち、環境問題に対応できる人材は SDGs にも対応できると言えるでしょう。 現実社会における複雑な問題に対処できる秀でた人材はコンピテンシーに優れていると言われています。コンピテンシーと いう指標が導入されたきっかけは、1970 年代に米国政府機関スタッフの能力は IQ や学歴という指標との相関がほとんど無 いという研究発表に端を発しています。現在に至るまで、その内容は多岐に渡り、多くの指標が提案されています。 本学では、コンピテンシーを業務遂行能力と定義し、独自に産業技術の各分野に適するコンピテンシーの指標とその計測法、 および、学習法を編み出し、実践してきました。その成果は、国内のみならず海外の各種機関や組織などで評価されているも のです。本学は、複雑な環境問題を解決して希望ある未来社会を築くことに貢献するため、コンピテンシーを磨き上げた人材 を今後も輩出していきます。 ※ Reed Landberg and and and Jeremy Hodges: What decarbonization means for cows steel and and and cement Bloomberg QuickTake Oct 08 2019 32 東京都立産業技術大学院大学 学長挨拶