Page 27 - 東京都公立大学法人 環境報告書2024
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アジアモンスーンがもたらす影響 高解像シミュレーション出力を詳しく解析した結果、イ ンド北部からインドシナ半島、西太平洋まで東西に延びる 帯状のモンスーントラフと呼ばれる領域で、顕著に降水量 が増加するという予測結果が得られました。また、台風を 含む熱帯擾乱活動の将来変化を調べたところ、熱帯擾乱活 動の変化は、モンスーントラフの降水量変化と極めて整合 的でした。それは、アジアモンスーン域の降水の将来変化 は、熱帯擾乱活動と強く関連していることを明らかにしま した。 今後の展望 本研究では、台風を含めた熱帯擾乱活動に伴う降水現象 が日本を含むアジアモンスーン域の降水の将来変化の重要 な要素であることを示しました。また、これらが、地球温 暖化に伴う海面水温の平均的な昇温の影響を大きく受けて いることも示しました。 さらに、海面水温の将来変化が、アジアモンスーン域の 降水量にどのような影響を及ぼすのかについても検討、全 球一様上昇とエルニーニョ現象に類似する海面水温パター ンの影響を分離するために、それぞれを別に与えたシミュ レーション結果についても調査を行い、アジアモンスーン 域の降水量変化に対して、全球一様な海面水温上昇の影響 が主要であることを明らかにしました。 これらの研究結果から、これらの活発化がアジアモンスー ン域の降水量変化の重要な要素であることが分かりまし た。 今後は、日本を含めたアジアモンスーン気候の将来変化 のさらなる理解のために、熱帯擾乱活動を含めた枠組みで の研究が期待されます。さらに、アジアモンスーンと熱帯 擾乱活動の関係は、最近のアジアモンスーン域での異常天 候を考える上でも重要なポイントであると思われます。 降水量の将来変化(将来気候―現在気候) (緑:増加、茶:減少) 雲の発生を予測するモデル(NICAM)による降水量の将 来変化のシミュレーション結果。黒い破線は台風などの熱帯 擾乱活動が活発なモンスーントラフを示しています。熱帯擾 乱活動の影響を受けて、モンスーントラフを囲む地域で降水 量の増加を予測しています。 ことが重要です。その気候変動を科学的に理解するために は、データ解析やプログラミングのスキルを身につけるこ とが重要です。最近のAI(機械学習など)も活用します。 気候の将来予測を科学的に分析し、社会に役立つ解決策を 提供できる人材が期待されています。 中学生・高校生のみなさんへ 気候変動による異常気象は今後さらに悪化することが予 測されています。例えば、豪雨や猛暑が増加し、私たちの 生活や環境に大きな影響を与える可能性があります。この 問題に対処するためには、気象学や気候学の知識を活かし て、気候変動を科学的に理解し、適切な防災対策を立てる 26 


































































































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