Page 29 - 東京都公立大学法人 環境報告書2024
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● 車両を効率的に 電気自動車や電車、新幹線のモーターを効率的に動かす ために、パワーエレクトロニクスが使われます。これらに 使われているパワーエレクトロニクス回路は、昔に比べて 大幅に小型化・軽量化が進み、輸送に必要なエネルギー消 費量が減少します。 脱炭素社会の実現を支えるパワーエレクトロニクス 現在、多数のパワーエレクトロニクス回路を高精度に同 期して同時に作動させることや、協調制御を行うなど、情 報通信技術と電力エネルギー分野が融合したパワーエレク トロニクスの多機能化に関する研究を進めています。この 技術が確立していくことで、電気エネルギーを効率よく授 受できるようになります。 また、パワーエレクトロニクス回路の中で使用されるパ ワー半導体の故障検知に関する研究も行っています。半導 体を含む各部品の寿命を予測できるようになれば、事前に 部品を交換するなど、製品の信頼性がさらに向上します。 東京都立大学パワーエレクトロニクス研究室に所属す る大学院生は、これらの研究開発を日々行っています。 具体的には、新しい回路方式や制御方式を考えて理論計算 やコンピュータを使ったシミュレーションを行います。さ らに、研究で考えた手法を確認するために大学院生が自身 でパワーエレクトロニクス回路の設計・製作を行います。 例えば新幹線では、パワーエレクトロニクス回路の小 型化によって空いたスペースにバッテリーを搭載すること で、架線からの電力の供給が途絶えた場合でも、隣の駅ま で自走することができるようになりました。 もちろん、電気・電子部品を購入して新しい回路を作り上 げていくことから行っています。単に設計を学ぶだけでは なく、購入した部品の実装や実際にはんだ付けをするなど 手を動かす作業を経験しながら、電気電子だけでなく、数 学・物理・情報・通信など様々な学問の知識を活用しなが ら、実践的な知識や技術を学びます。 電気電子の分野において新たに開発していくためには、 AIはもちろん、プログラミングの実践、そして設計のた めに物理や数学の知識が前提となります。これらは、これ からの電子・電気産業を支えるために必要不可欠な知識で す。大学を卒業後に企業で製品設計や開発を行う場合にお いても、学生時代にものづくりを経験することは必要不可 欠であると私は考えています。学生たちには、社会を広い 視野で捉え、脱炭素社会への移行を支える存在として成長 してほしいと願っています。 研究室で設計・製作した400V 10Aのパワーエレクトロニクス回路 28