Page 28 - 東京都公立大学法人 環境報告書2024
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東京都立大学 環境に配慮した研究 パワーエレクトロニクス回路の高性能・高信頼化 システムデザイン研究科 電子情報システム工学域 和田 圭二 教授 私が所属するシステムデザイン学部は、システム技術を機能と感性という二つの側面から総 合的に教育研究する最先端の学部です。私自身はパワーエレクトロニクス回路の高性能や高信 頼化に関する研究を中心に行っています。家電製品の省エネを可能にし、再生可能エネルギー の電力供給に欠かせないパワーエレクトロニクス技術は、脱炭素社会の実現において重要かつ さまざまな場面で役割を果たします。 実は身近な存在、パワーエレクトロニクスとは パワーエレクトロニクスは、パワー半導体を用いて電圧 や電流、周波数を自在に制御する技術で、エアコン・冷蔵 庫・照明などの家電製品、携帯の充電器、電気自動車や鉄 道といったあらゆる分野で利用されています。例えば、家 庭のコンセントを使って家電製品を使用するとき、電力会 社から送られてくる電気と電気製品との間にパワーエレク トロニクスを使った回路が挿入されることで、効率よく電 力を利用できるようになります。 パワーエレクトロニクス回路の高効率・信頼性を向上させ るためには、回路設計だけでなく、新しいパワー半導体の開 発や周辺部品も性能が上がっていくことが不可欠です。一つ の部品だけが特出した良い性能を持っていたとしても、シス テム全体として性能が上がるわけではありません。 脱炭素社会の実現を支えるパワーエレクトロニクス ● 再生可能エネルギーを効率的に 太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの普及のた めに、パワーエレクトロニクスが不可欠です。 太陽光や風力などによる再生可能エネルギーにより発電し た電力を送配電網に供給する場合、季節や天候に左右される ため出力調整を行う必要があり、その調整役を果たすのがパ ワーエレクトロニクスです。 また現在、電柱の上に搭載されている変圧器は、完成され た技術によって世界中で使用されています。この変圧器に新 しい技術としてパワーエレクトロニクスを採用することで、 送配電網でより大量に発電された電気を安定的に供給するこ とができるようになります。 さらに、パワーエレクトロニクスを使い、電力の需要地 に近い場所で再生可能エネルギーの発電を行う「電力の地 産地消」ができるようになれば、送電による電力のロスを 削減し、安定的かつ効率的な電力供給が実現します。 研究室の学生が製作した回路 脱炭素社会の実現に必要不可欠な パワーエレクトロニクス技術 27 


































































































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