Page 38 - 東京都公立大学法人 環境報告書2024
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環境に配慮した活動 未来工房プロジェクト「熱遮断による室内の温度変化」について 品川キャンパス 高専には、ものづくりに関する様々なアイデアやチャレンジを学生から募り、採択された活動に対し支援する制度、「未来工 房プロジェクト」があります。 2024年度、この「未来工房プロジェクト」において、地球温暖化が進み、また電気代が高騰する中、品川キャンパス本科4 年生3名が日常生活で簡単に手に入る材料を使い、効果的に室内温度を変化させる方法についての実験を行いました。 1 1 1 実施日時 2024年8月19日(月)~8月27日(火)の8:40~16:00 2 2 2 2 実施場所 高専品川キャンパス校舎内の3教室(3階東棟) 3 3 3 実験のきっかけ 教室内で暑いと感じる人、冷房の風が寒いと感じる人の両方がい ることから、効率的な室温調整について考えたこと 4 実施手順 1 1 実験会場となる3教室内の離れた位置に、温度を測定するプログラムを書き込 んだモジュールとモバイルバッテリーを4か所ずつ(合計12個)設置 2 2 初日は窓になにも貼らない状態でエアコンをつけず教室を密閉状態にして温度 測定 3 3 2~4日目は3教室の窓にそれぞれ遮光フィルム、断熱シート、簾を設置した 上で、エアコンなしで温度測定 4 5日目からは各教室に1台サーキュレーターを設置、エアコンを稼働させた上 で温度測定 5 測定はWeb上のアプリで管理。10分ごとに測定したデータはリアルタイムに アプリに送られる。このためPCやスマートフォンからも随時確認可能 6 2~4で収集したデータをもとに、それぞれの素材ごとの温度上昇の特徴や差 異について考察をまとめる 測定データ収集の仕組み 測定モジュール(温度センサ) (ESP32) (Wifi ) Web PC 1 考察・結論 考察・結論 2 考察・結論 考察・結論 考察・結論 3 考察・結論 考察・結論 考察・結論 4 考察・結論 考察・結論 考察・結論 5 考察・結論 考察・結論 左から遮光フィルム、断熱シート、簾を窓に貼った様子 測定結果の例 窓側の席には直射日光が当たるため、日が昇る前に断熱シートを貼ることで温度上昇を抑えられる。遮光フィルムと簾 は多少日を通すため晴れた(日差しが強い)日に温度上昇を抑えるには向かないと考えられる。 一方、サーキュレーターを稼働させた場合、3日間、全ての調査地点で正午ごろまでは温度が下がり続け、これを過ぎ ると温度が上昇するという結果から、早い時間帯に冷たい空気を循環させることで温度は下がり、この冷たい空気がなく なり部屋全体が一定の温度になると上昇に転じたと考えられる。このことから、正午頃から冷房を使用することで1日中 比較的快適に過ごせるのではないかと仮説を立てた。 今回使用した各材料の特性(遮光フィルム:日射熱を大幅にカットして熱が室内に入り込むのを防ぐ・断熱シート: シートに含まれる空気層により熱の伝達を遅らせる効果があるが、日が全く入らないため室内は暗くなる・簾:光を遮断 しながら風を通すことで熱を通しにくくしている。使用時に水をかけることで2度ほど温度を下げる効果がある)等をあ わせ総合的に考えると、一軒家では外に水で濡らした簾を設置し、集合住宅の場合は遮光フィルム、隣の家が近い場合は 目隠しの意味も込めて断熱シートの設置が好ましいと考える。 「未来工房プロジェクト」では高専生らしいロボットの制作やシステム開発など多岐にわたるアイデアが取り上げられます が、この実験では学生自らが温暖化問題を身近な問題として認識し、身の回りの材料やなじみのあるモジュールなどを活用し て、少しでも室内温度の上昇を抑えるにはどうすればよいかとの考察を行いました。なお、この実験結果は10月26日、産技 祭において開催された成果報告会で発表を行い、多くの方にもご覧いただくことができました。 37